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新しい和文誌「植物たちの護身術」(種生物学研究 44号)を 2024年2月9日に発行しました
新着情報 2024年02月20日
新しい和文誌「植物たちの護身術」(種生物学研究 44号)を 2024年2月9日に発行しました
新しい和文誌「植物たちの護身術」(種生物学研究 44号)を 2024年2月9日に発行しました。会員の皆様には既に発送しております。
本書は 2020 年 12 月に開催された第 52 回種生物学シンポジウム「食べられないために守る術-植物の多様な対被食者防御戦略-」の内容をもとに、執筆者の方々に、植物と植物を食べる昆虫や哺乳類との相互作用に関する最新の研究成果をご紹介いただきました。植物の被食防御研究の研究を進める上で、重要な知見・ノウハウが詰まった本となっております。初学者でも読みやすいように脚注やオンラインコンテンツも充実しています。お近くに興味を持ちそうな方がおられましたら、お知らせいただけますと幸いです。
=本書の概要=
植物と植食者は地球上の生物種およびバイオマスの約4分の3を占める自然界の主要な構成員であり、4億年にもおよぶ相互作用の中で、植物は植食者に餌資源を提供する一方、固着生物ならではの多様な防御形質を進化させ食害を防いできました。近年、変動環境下での植物と植食者の応答を理解することが求められている中、分子・個体・群集の階層をつなぐ植物防御に関するより詳細なメカニズムの解明がすすみ、さらに今まで見過ごされてきた多様な防御戦略が明らかになりつつあります。本書では、まず第 1 章で、「植物の多様な護身術に関する温故知新」として、これまでの植食者に対する植物防御の研究の歴史を振り返りながら新しい知見について解説し、なぜ今新たに植物の防御に注目したのかという本書の目的を紹介しています。続く第 1 部から第 3 部では、植物防御の柔軟なしくみ、進化、新たに発見された現象という観点からの研究をまとめています。各章では,研究者がそれぞれ独自の視点で展開した研究内容が紹介され、さまざまな防御戦略の意義や、その戦略がどのように形成されたかが語られています。第 4 部では,これから研究を始めようとする方々が利用できるように、第一線の研究者の独自の工夫点も交えつつ、主要な植物防御の評価方法をまとめています。より多くの人がこの分野の研究に着手し,新しい発見をする後押しとなれば幸いです。
植物たちの護身術:被食防御の生態学
種生物学会編/文一総合出版
【目次】(敬称略)
はじめに
第1章 植物の多様な護身術に関する温故知新(坂田 ゆず・佐藤 安弘・角田 智詞)
第1部:多様な環境に柔軟に応答する植物防御のしくみ
第2章 環境変動が高木の植物と昆虫の相互作用に与える影響(中村 誠宏 )
コラム1 アリに保護される生物たち:花外蜜腺を持つ植物とアブラムシのアリをめぐる競争(片山 昇・山尾 僚)
第3章 アカメガシワによる共生者の行動操作(山尾 僚)
第4章 天敵を利用した植物の防御応答:昆虫と植物それぞれの事情(吉永 直子)
第2部:植物の防御と進化
コラム2 連合効果 周囲の植物も巻き込む植物の防御(坂田ゆず・佐藤安弘)
第5章 正解のない生き方:被食防御戦略の進化で変わる植物間相互作用(鈴木 亮)
第6章 外来植物の防御の進化:植食性昆虫との相互作用の地理的変異に着目して(坂田 ゆず)
第7章 連合効果を介したトライコーム二型の維持:ハクサンハタザオとハムシを例に(佐藤 安弘)
第3部:これまで見落とされがちだった植物防御の新側面
第8章 葉の形による被食回避:葉を巻く甲虫オトシブミが利用しにくい葉の形(樋口 裕美子)
第9章 植物も見た目で身を守る:視覚による対植食者防御の世界(山崎 一夫)
第10章 地下部における植物と昆虫の相互作用研究の展開(角田 智詞)
第4部:植物防御形質の評価方法
第11章 食害量の定量手法(坂田 ゆず)
第12章 物理防御形質の評価方法 葉トライコームと葉の力学的特性の定量(甘田 岳)
第13章 汎用機器を用いた総フェノールおよび縮合タンニンの定量方法(片山 昇・西田 貴明・山尾 僚・坂田 ゆず)
第14章 HPLC を用いたからし油配糖体定量のための抽出方法:日本での生態学研究のための方法(角田 智詞・Katharina Grosser・Marie Nicole van Dam)
第15章 花外蜜の分泌量の測定と糖成分の分析(片山 昇・山尾 僚)