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第18回 男女共同参画学協会シンポジウム 参加報告

新着情報 2020年12月08日

男女共同参画担当 堂囿いくみ

新型コロナの影響で,例年10月に行われる男女共同参画額協会シンポジウムはzoom開催となりました。zoom開催となったことで,種生物学会からは4名(主に子育て中の学会員)が参加することができました。シンポジウムのテーマは,「女性研究者・技術者の意志・能力・創造性を活かすために〜女性リーダーが例外ではない社会をめざして〜」でした。

第18回 男女共同参画学協会シンポジウム
2020年10月17日(土)10:00〜17:40 (zoom開催)
プログラム資料 https://www.djrenrakukai.org/symposium1.html
 

講演2「キリングループの多様性推進とキャリア形成について」神崎夕紀さん:

 キリングループの多様性を重視し,多様性を活かす理念のもと,その取り組みが紹介されました。女性社員のキャリアップを前提に,20代の頃から様々な経験をさせて教育し,ライフイベントを考えたキャリアップのルートを示していました。また,結婚していない,子供もいない社員に,育児中の経験(子供が熱を出したので早退する,出社できない)をさせる「なりキリン」という取り組みが紹介されました。育児中は突然の子供の対応が多く,なかなか言いにくいこともあり周りに気を使います。「なりキリン」のような取り組みで,何に困っていて,何をしてもらえると助かるかといった「現実感」を共有でき,相互理解(共感)が深まることが期待できると思いました。
 

特別企画「緊急事態宣言による在宅勤務中の科学者・技術者の実態調査報告」志牟田美佐さん:

 緊急事態宣言下の5月15日から6月13日に実施されたアンケート調査結果の報告でした(HPでも見ることができます*1)。研究室の使用制限や試料の損失,野外調査の制限によって,研究に対する不安が大きいことが示されました。また,任期付き立場の若手研究者や学生に大きな不安があることが示されました。在宅となったことで,家事や育児の負担が増えたことで勤務に支障があると答えた人は,女性に多かったようです。私も小学校が休校になったことで,負担増を強く感じました。また,大学から野外調査の自粛要請があったため研究費を使って調査ができないことへの不安は大きかったです。大学内の事務手続きは省略化されてかなり楽になりましたが,オンライン授業の負担は大きくなりました。一方で,自宅からもできること,野外調査で出張してもオンデマンドであれば休講にする必要がなく,良い点はこれから取り入れていくことが必要だと思いました。
 

基調講演1「男女共同参画はゴールかツールか?」上野千鶴子さん:

 男女共同参画が何のための取り組みかというところが,必ずしも明確にはなっていないという指摘でした。理念は理解していても,具体的に何をするのかという発信が必要なのかもしれません。近年の女性リーダーの活躍から,女性が得意とする「共感力」が,リーダーに必要な決断力と対極にあるのではなく,むしろ同じベクトルであるというお話がありました。女性リーダーが科学的な情報を元にコロナ対策を講じ,国民の共感を得ていたこともその一例だと感じました。意思決定の層に女性が入っていることは重要なことであるとともに,様々な組織の男女共同参画担当(子育て経験のある女性が多い)に男性はもちろん,様々な立場(介護や不妊治療や病気を抱えている方)の方々が担当することで,相互理解と寛容さが醸成されると思います。
 

基調講演3「ポストコロナ社会の男女共同参画」渡辺美代子さん:

 女性限定公募で採用された人は,限定しない公募に比べて実績をあげているというお話がありました。輝く女性研究者賞を受賞した群馬大学の例も示されました。女性限定公募は,採用側・応募側の両方から異論がでることも多いですが,このような実績(エビデンス)を示していくことにより理解が広がることを期待します。女性限定公募では,採用後の立場に不安があり,女性が応募を控える場合もあるという話もあり,上野さんからは,もっと自信を持って応募すべきだという応援がありました。近年RPDという出産育児中の研究者(男性も可)への支援制度がありますが,RPD終了後にポストについた人の割合が男性より女性の方が低いこと,さらに学振PDより低いことが報告されました。また,博士課程の女性比率よりも助教の女性比率が低いことからも,結婚出産育児というライフイベントによって,研究から離れる割合が高いことがうかがえます。当学会でも,任期付きで出産育児となった場合,研究環境に戻れるのかという不安を持つ声が聞かれます。ロールモデルはずば抜けた能力をもった人やうまくいった例が紹介されがちですが,個人によって事情が異なるため,そのまま適用できるモデルはありません。当事者が多様な選択肢があることや使える制度・サポート制度について共有し,情報交換と問い合わせができるような場が必要であり,今後,学会はその役割を担っていくことを考えていく必要があると思います。最近,若手の学会員の方で収入の問題や,ライフイベントをきっかけに,退会される方もおられます。将来会員に復帰することを念頭に「休会」制度があれば,研究活動へ戻れないのではという当事者の不安の軽減に繋がると思います。

*1 https://www.djrenrakukai.org/doc_pdf/2020/survey_covid-19/index.html