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【連絡】第4回 Plant Species Biology 論文賞 (Best Paper Award 2010) 選考結果
新着情報 2010年11月29日
Plant Species Biology(PSB)論文賞選考委員会は、PSB 2009 Vol.24(3)とPSB 2010 Vol.25(1-3)に掲載されたregular article 27編の中から、編集担当委員(選考委員)による推薦(一次選考)と、投票による二次選考を行いました。その結果、以下の論文に、Plant Species Biology 論文賞(Best Paper Award 2010)を授与することに決定いたしました。なお授賞式は,12月11日(土)の種生物学会2010年度総会にて行います。
Shosei Kubota & Masashi Ohara: Discovery of male sterile plants and their contrasting occurrence between self-compatible and self-incompatible populations of the hermaphroditic perennial Trillium camschatcense. PSB(2009)24-3:169-178.
論文要旨
オオバナノエンレイソウ(Trillium camschatcense)は両性花を顕花する雌雄同株植物として認識されてきたが、複数の野外集団において雄蕊が矮小化した個体が観察される。本研究は雄蕊矮小化が個体の性機能に及ぼす影響を評価することで、この現象が雄性不稔であるかを確認するとともに、集団間で見られる出現頻度の差の生態的要因を考察した。実験の結果、雄蕊矮小化は個体の雄機能を不稔化する、遺伝的に固定された形質であることが示された。一方、雌機能は正常であったことから、雄性不稔個体は近交弱勢の回避という面で両性個体よりも有利になり得ると考えられる。実際、高い自殖率と強い近交弱勢が検出される自家和合性集団における出現頻度は高く、近親交配が生じない自家不和合性集団ではほとんど出現しなかった。したがって、オオバナノエンレイソウは条件的な雌性両全性異株性を示す植物であり、雄性不稔個体の出現頻度は自然選択を受けて決定されていることが示唆された。
(Plant Species Biology 論文賞選考委員長 大原 雅)